設立趣意書

幼い時、若い時に、楽器、音楽と出会うことによって、その後の人生に豊かな調べを加えることがあると思います。それは人によって、耳を澄まさねば聞こえないほど微かであることもあるでしょうし、また、その人の主旋律となって鳴り響くこともあるでしょう。

しかし中には、その調べが、過去の一時期のみを彩る風景となっている人もいます。かつて胸の内に鳴り響いた音楽を呼び覚ましたいと思いながらも、様々な理由によって、音楽から離れた日々を過ごす人も少なくないと聞きます。

また、わが街にもいくつかの音楽集団があります。しかし、集団相互はもとより、集団内部においてすらも、その交流は活発ではないように見受けられます。

例えば、進学などでこの街を離れ、また再びこの街に戻ってきた方、就職などでこの街に転入してきた方はたくさんいることでしょう。しかし、そのような人々の音楽に対する多様な考え方や価値観は、個々人や既存の集団内にて完結されてしまっているのが現状ではないでしょうか。それは、非常に惜しいことだと思われます。

当楽団、オーケストラ・フィルジッヒは、個々の様々な理由から、恒常的な音楽活動・オーケストラ活動が困難になっている人々へ、再び音楽が出来る場所を提供し、様々な音楽的価値観・音楽的価値の交流、またはそれらを共有出来る場所の提供を目的として設立されました。

演奏会に於いては、普段ではあまり演奏されないバロック期、または近現代の作品を取り上げることで、楽団員のみならず、市民の皆さんにも、音楽の新たな一面を知っていただくことが出来るのではないかと思います。

今まではもたれていなかった総合的な交流が、福島の音楽文化の向上、ひいては、地域社会の活発化にも繋がるものと期待し、またそうなるように努力していきたいと考えています。

団体名に冠したフィルジッヒ――桃は、この街の花であると同時に特産品でもあります。その花が、果実が、季節を巡って、美しく咲き、春の野を彩るように、香りが風に乗って届くように、また、豊かに実り、その芳醇な味わいで人を喜ばせるように、当楽団の存在が、音楽を愛する人たち全てにとって、歓迎されるものであることを、強く願うものであります。

平成15年8月19日

オーケストラ・フィルジッヒ楽団長 鈴木 崇大